イスラエルVSイランは「何時から」、「なぜ」仲が悪い

1979年以降：イラン革命でイスラム共和国が成立。反米・反シオニズムを掲げ、イスラエルの存在を否定。パレスチナ問題やヒズボラ支援を通じて対立が深まる。

＜主な対立要因＞
イデオロギー：イランのイスラム革命は反シオニズムを基盤とし、イスラエルはイランの体制を「テロ支援国家」と見なす。

核開発：イスラエルはイランの核プログラムを存亡の脅威とみなし、阻止を目指す。イランは「平和利用」と主張。

地域覇権：中東での影響力拡大をめぐり、シリア、レバノン、イエメンで代理戦争を展開。イランは「抵抗の枢軸」（ヒズボラ、ハマス、フーシ派）を支援。

直接衝突：サイバー攻撃、暗殺（例：2020年イラン核科学者暗殺）、空爆などで「影の戦争」が続いてきた。

【中東の地政学的文脈】
中東は、宗教（スンニ派・シーア派）、資源（石油・ガス）、戦略的要衝（ホルムズ海峡、スエズ運河）、大国間の勢力争い（米・中・露）が絡む複雑な地政学的地域です。イスラエルとイランの対立は以下のように地域全体に影響します：
シーア派 vs スンニ派：イラン（シーア派）はイラク、シリア、レバノンで影響力を拡大し、サウジアラビアなどスンニ派諸国と対立。イスラエルはスンニ派のサウジやUAEと「アブラハム合意」（2020年）で接近し、反イラン軸を強化。

米国の影響：米国はイスラエルを支持し、イランに制裁を課す一方、イラン核合意（JCPOA）再交渉が難航。2025年のトランプ政権復帰で、親イスラエル・反イラン姿勢が強まる。

ロシア・中国の役割：ロシアはシリアでイランを支援し、中国はイランの石油購入や経済支援で影響力を拡大。両国は反米軸でイランを後押し。

エネルギー地政学：イランは世界4位の原油埋蔵量を持ち、ホルムズ海峡を支配。イスラエルの攻撃はエネルギー供給に影響し、原油価格や日本などアジア諸国に波及。

パレスチナ問題：イランはハマスやヒズボラを支援し、イスラエルとの対立を間接的に煽る。2023年10月のハマス攻撃以降、ガザやレバノンでの緊張が地域全体に拡大。

【2025年6月のイスラエルによるイラン攻撃】
概要：6月13日、イスラエルが「ライジング・ライオン作戦」でイラン国内100カ所以上（核施設、ミサイル工場、革命防衛隊本部、エネルギーインフラ）を空爆。約200機の戦闘機が参加。

＜被害＞
イラン：核科学者6～9人、革命防衛隊高官（サラミ司令官など）死亡。テヘラン州で78人死亡、300人以上負傷。ナタンズやイスファハンの核施設に被害。

イスラエル：イランの報復ミサイル攻撃（100～200発）でテルアビブやハイファに被害。死者3～13人、負傷者70～380人。

イランの報復：ハメネイ最高指導者が報復継続を宣言。ミサイルやドローンでイスラエルの軍事・エネルギー施設を攻撃。

＜地政学的影響＞
エネルギー市場：ホルムズ海峡の緊張で原油価格が10%超上昇（WTI原油1バレル77ドル台）。日本や中国など中東依存国に影響。

地域の不安定化：ヒズボラやフーシ派が報復強化を表明。シリアやイラクでの代理戦争が激化するリスク。

国際反応：米国はイスラエル支持だが直接介入せず。ロシア・中国はイスラエル非難。国連安保理は自制を求めるが、核合意交渉は中断。

核開発：イランの核能力は数カ月遅延したが、報復でウラン濃縮を加速する可能性。

【中東地政学における今後の展望】
イスラエルの戦略：イラン核開発阻止と地域覇権の維持を目指す。サウジやUAEとの協力強化で「反イラン連合」を固めるが、ガザやレバノンでの戦闘が長期化。

イランの戦略：抵抗の枢軸を動員し、イスラエルや米国への圧力を維持。核開発継続と経済制裁下でのロシア・中国との連携強化。

リスク：ホルムズ海峡封鎖やサウジ・イラン間の緊張再燃で、中東全域の紛争拡大の可能性。エネルギー危機や国際経済への影響も懸念。

大国間の綱引き：米国のイスラエル支持、ロシア・中国のイラン支援が中東を代理戦争の場に。欧州はエネルギー依存から中立姿勢を模索。

【まとめ】
イスラエルとイランの対立は、1979年のイラン革命を起点に、イデオロギー、核問題、地域覇権で悪化。2025年6月のイスラエルによるイラン攻撃は、中東の地政学的バランスをさらに不安定化させ、エネルギー市場や地域紛争に波及。シーア派・スンニ派対立や大国間の勢力争いの中で、両国の衝突は単なる二国間問題を超え、中東全体の安定を脅かしています。さらなるエスカレーションのリスクは高く、国際社会の調停努力が急務です。