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「フリーランス保護法」(正式名称:特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、フリーランスの労働環境を保護し、公正な取引を確保することを目的とした法律で、2023年4月28日に成立し、2024年11月1日に施行されました。

1. 背景と目的
・背景: 働き方の多様化に伴い、フリーランス人口が増加(総務省統計局によると2022年時点で本業フリーランスは209万人以上)。しかし、企業との取引で立場が弱いため、報酬の未払いや不当な契約条件などのトラブルが問題に。内閣官房の調査では、23%のフリーランスが取引上のトラブルを経験。

・目的: フリーランスの取引の適正化と就業環境の整備を通じて、安心して働ける環境を構築すること。具体的には、発注者による不当な扱い(報酬減額、納品拒否など)を防ぎ、ハラスメント防止や透明性の高い取引を促進。

2. 適用範囲
・対象者: 「特定受託事業者」(フリーランス)として、従業員を雇用しない個人事業主や、代表者以外に役員・従業員がいない一人法人が対象。週20時間以上かつ31日以上雇用する従業員がいる場合は対象外。

・対象取引: 業務委託契約(物品の製造、情報成果物の作成、役務提供など)。下請法の適用範囲(製造業や修理業など)に限定されず、幅広い業種に適用。

・発注事業者: フリーランスに業務を委託する企業や個人事業主(業務委託事業者)。特に継続的な委託を行う「特定業務委託事業者」に追加の義務あり。

3. 主な規制内容
フリーランス保護法は、取引の適正化と就業環境整備に関する以下の義務を定めています。
(1) 取引の適正化
・取引条件の明示: 発注者は、契約時に業務内容、報酬額、支払期日などを書面やメールで明示する義務。

・禁止行為: 以下の行為が禁止され、違反時は行政指導や罰則の対象に。
  ・理由のない成果物の受取拒否(例:急に基準を厳しくする、納期を早めて拒
   否)。

  ・約束した報酬の不当な減額(例:予算不足を理由に減額)。

  ・不当な返品や支払遅延、買いたたきなど。

・支払期限: 報酬は納品後60日以内に支払う必要あり。

(2) 就業環境の整備
・ハラスメント防止: 発注者は、フリーランスに対するパワハラやセクハラ防止措置(相談窓口の設置など)を講じる義務。特に継続的な取引を行う事業者に適用。

・募集時の透明性: 虚偽や誤解を招く募集広告の禁止(例:報酬や条件の誇張)。

・妊娠・出産・育児・介護への配慮: フリーランスがこれらの事情で業務に影響が出る場合、適切な配慮を行う。

4. 罰則と行政対応
・行政指導: 違反が確認された場合、公正取引委員会や中小企業庁長官、厚生労働大臣が助言や指導を実施。2025年3月には、アニメ制作やゲームソフト関連の45社が取引条件の明示義務違反で初の行政指導を受けた。

・罰則: 報告拒否や虚偽報告、立入検査拒否で50万円以下の罰金。ハラスメント関連の虚偽報告には20万円以下の過料。

・申出制度: フリーランスは違反を公正取引委員会や中小企業庁に申告可能。申出件数の増加が予想される。

5. 下請法との違い
・適用範囲: 下請法は資本金や取引類型(製造業など)に制限があるが、フリーランス保護法は業種や資本金の制限なく幅広く適用。

・規制内容: 下請法は支払遅延や買いたたき防止に重点を置くが、フリーランス保護法はハラスメント防止や募集時の透明性、妊娠・育児への配慮など、より広範な保護を提供。

・併用可能性: フリーランスは下請法や独占禁止法の保護も受けつつ、本法の適用を受ける。

6. 企業に求められる対応
・契約書の見直し: 取引条件を明確に記載した契約書や発注書の整備。曖昧な契約は違反リスク。

・報酬支払いの徹底: 60日以内の支払いルールを遵守。

・ハラスメント対策: 相談窓口の設置や社内教育の実施。

・募集広告の確認: 誤解を招く表現の排除。

・ガイドライン参照: 厚生労働省などが作成した「フリーランスガイドライン」を活用し、法律の詳細な運用を理解。

7. 現状と課題
・効果: 2025年3月の行政指導事例のように、法律の効果が現れ始め、フリーランスの待遇改善が進むと期待される。

・課題: 一部では、インボイス制度との矛盾(フリーランスへの負担増)が指摘されており、さらなる制度改善を求める声も。

・準備の必要性: 企業は施行後の行政監視強化に対応するため、早急に契約や運用体制を見直す必要あり

8. 関連情報
・厚生労働省や公正取引委員会の公式サイトで、詳細なガイドラインやQ&Aが公開されている。

・弁護士や専門家による解説書(例:西川暢春弁護士の書籍)も参考になる。

・企業向けの相談窓口やセミナー(例:新日本法規、顧問コンサルティング)も活用可能。

この法律は、フリーランスの権利保護と企業側の公正な取引を促進する重要な一歩です。企業は違反リスクを避けるため、早めの対応が求められます。

注: 2025年6月時点の情報に基づいています。最新情報は公正取引委員会や厚生労働省の公式発表を確認してください。

<ツイッターの反応>

えび
@ebiben2008

見落としがちだけど、フリーランス保護法4条2項で、支払期日が明示されなかった場合には給付の受領日が支払期日とみなされるのよね。

(出典 @ebiben2008)

ドントハグミー男爵🐝🧷
@Baron_of_66

マンガ家はフリーランス保護法が適用されるのかどうかって少し前に問題にならなかった?この違反の中にマンガ家が含まれているかどうか気になるところ。

(出典 @Baron_of_66)

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